【書評】『フリーエージェント社会の到来(ダニエル・ピンク 著)』
この本は、15年以上も前に執筆されているにもも関わらず、現代にも十分通じる部分がたくさんあると聞いて読むことにしました。
企業勤務の私とは対極に位置する「雇われない生き方」について学びたいと思います。
フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
- 作者: ダニエルピンク,Daniel H. Pink,池村千秋
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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こんな人にオススメ!
- 就活を控えている学生
- 独立を考えている人
- 将来の働き方を知りたい人
特に印象に残ったキーフレーズ
フリーエージェントとは?
フリーエージェントとは、「インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々を指す。
本書を読むにあったては、はじめに"フリーエージェント"の定義をはっきりしておかなくてはなりません。
今だと、フリーランサーといった呼び方もされていますね。
(厳密には、違う意味で使われているのかもしれませんが。)
オーガニゼーション・マンとは?
オーガニゼーション・マンは、当時のアメリカの典型的な労働者だった。
そのほとんどは男性で、大組織のために個性や個人的目標を押し殺した。
この禁欲の代償として、組織は定収入と雇用の安定、そして社会における居場所を提供した。
オーガニゼーション・マンは、野蛮や個人主義に陥ることなく、高望みせずに、「悪くない給料とまずまずの年金、そして自分と限りなくよく似た人たちの住む快適な地域社会にそこそこの家を与えてくれる仕事に就こうする。」
フリーエージェントと対極にいるのがこのオーガニゼーション・マンです。
要するに、サラリーマンですね。日本のサラリーマンってまさにこんな感じ。
無論、私もオーガニゼーション・マンということになります。
働き方はハリウッド・モデルへ
いまの映画産業は、かつてとはまるで違う仕組みに動いている。
特定のプロジェクトごとに、俳優や監督、脚本家、アニメーター、大道具係りなどの人材や小さな会社が集まる。
プロジェクトが完了すると、チームは解散する。
(省略)
特定の目的のために特定の場所に人材が集結して、使命が終わると解散し、メンバーはそれぞれ次のプロジェクトに向かっていく。
このハリウッド・モデルが、要するにフリーエージェント・モデルなのである。
大勢の個人を常に戦力として抱える固定的な大組織は、戦力が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークに取って代わられようとしている。
この表現は非常にわかりやすいですね。
必要なときに必要な人材が集まりプロジェクトに取り組む。
そして、集まった人材はそれぞれが専門分野を持っている。
目まぐるしく状況が変わるこの世の中では、このような柔軟な体制を取ることはある意味必然なのでしょうか。
大企業のような大きな組織では、このスピード感についていけないのも納得してしまいます。
フリーエージェントの4つの価値
①自由
自由とは、行動の自由、選択の自由、それに意思決定の自由である。
フリーエージェントの魅力は、「好きな時に、好きな場所で、好きな量だけ好きな条件で、好きな相手と仕事をすることができる」ことだ。
意味のある人生を送りたいという心の渇きを癒してくれるのは無料のコーラではなく、自由なのだ。
②自分らしさ
私が話を聞いたフリーエージェントたちは、勤めていた頃の自分を語る際に、「変装」や「潜伏」という言葉をよく使った。
職場では「仮面」を被り、あるいは「鎧」を身につけ、「煙幕」を張っていたという。
大組織の中で本当の自分を見せることは、あまりに危険だからだ。
仕事を終えて家に帰ってはじめて、衣装や防具を脱ぎ捨て、本当の自分に戻ることができた。
③責任
従来の組織では、仕事に対する責任は組織の階層的な構造の中でうやむやになってしまうことが多い。
責任を問われることも少ない半面、手柄を認めてもらえることはもっと少ない。
そのため、自分の仕事ぶりがどの程度のものなのかよくわからなかった。
フリーエージェントは仕事に責任をもつ。
仕事の成功に対する責任、顧客に価値を与えることのできる技能や経験を身につける責任、仕事の質に対する責任、ビジネスチャンスを見つけて自分を売り込む責任、顧客と良好な関係を保つ責任を負っている。
④自分なりの成功
大半のフリーエージェントとって、必ずしも「大きいことはいいこと」ではない。
自分にとっていいことこそ、いいことなのだ。
出世や金など「共通サイズの服」の基準で成功を目指す時代はもう終わった。
自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐など、「自分サイズの服」の基準で成功を目指す時代になったのだ。
成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ
「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」
オーガニゼーション・マンでは手に入らない、もしくは、手に入りにくい価値観ですね。
ただし、これらの価値を得られる可能性があることと引き換えに、全ての結果が自己責任になるわけであることは忘れてはなりません。
また、特に気になったのは「自分なりの成功」です。
昔と比べて、人によって成功の定義は大きく異なってきています。
モノが満たされている世の中でお金や出世だけが成功の基準でなくなってきているからですね。
これからの時代は、"自分にとっての"成功を定義して、実現に向けて努力できる人間が幸せを手に入れられるのかもしれません。
下記の引用文も心にとめておきたいと思います。
遠い将来のご褒美のために一生懸命働くのは、基本的には立派なことである。
けれど、仕事そのものもご褒美であっていいはずだ。
いまやどの仕事も永遠に続くものではないし、大恐慌が訪れる可能性も大きくない。
それなら、仕事を楽しんだほうがいい。
自分らしくて、質の高い仕事をする。
自分の仕事に責任をもつ。
なにをもって成功と考えるかは自分で決める。
そして、仕事が楽しくないと感じることがあれば、いまの仕事が間違っていると考えるのだ。
リスクをヘッジせよ
ひとつの企業に就職すること、いわば自分のもっているすべての人的資源をひとつの会社に投資することは、基本的に賢明な選択として考えられていた。
しかし、いまや大半の人は、すべての人的資源をひとつの企業に投資することは全財産をIBM株に投資するのと同じように愚かなことだと感じている。
資産運用の世界と同じように、仕事の世界でも「分散投資」が生き残りの条件になりつつあるのだ。
落合陽一さんの働き方がまさに分散投資の好事例です。
落合陽一さんの働き方をみていると、もはやどれが副業なのかもわかりません。
というよりは、副業などという概念はなくすべてが主業務なのでしょう。
さらに、それぞれの仕事の相乗効果によって、落合陽一というブランドをさらに押し上げるわけですね。
肩書き多いからねw
— 落合陽一 (@ochyai) 2018年2月27日
メディアアーティスト(個展とかコラボ作品とかやるときは
企業経営(ピクシーダスト
大学教員(筑波大准教授・ラボ運営・学長補佐(大学運営)
JST研究プロマネ(CREST
各種客員教授
理事職
政府系委員 https://t.co/Ic5njXMfSX
落合陽一さんのような働き方は、なかなかマネできないですが、一つの企業に依存することが今後の世の中において、リスクであることは十分に理解しておく必要があります。
理解しているからこそ「副業」がブームになりつつあるのでしょうが。
この本を読んでどう活かす?
終身雇用制度の崩壊、業績の悪化、競合の激化など考えるだけでも会社員でいることのメリットは減ってきている気がします。
もちろん、フリーエージェントにも多大なリスクはあるわけですが、自分の努力次第で結果を変えられるフリーエージェントには魅力を感じざるを得ません。
年齢的にも早いに越したことはないので一度真剣に考えてみたいと思います。